今日は予算特別委員会民生文教分科会。以下の予算費目についての審査を行っています。
予算種別 | 款 | 項 |
令和5年度芦屋市一般会計予算 | 3款 民生費 | 2項 老人福祉費 |
3項 児童福祉費 | ||
4項 生活保護費 | ||
5項 災害救助費 | ||
令和5年度芦屋市介護保険事業特別会計予算 | ||
令和5年度芦屋市国民健康保険事業特別会計予算 | ||
令和5年度芦屋市後期高齢者医療事業特別会計予算 |
気になるところを書いときます。
子ども医療費の拡充について
所得制限ありでもいいから、現行15歳までの制度を18歳まで引き上げるべきだという意見がありました。その場合、要する予算としては5200万円程度を見込んでいるとのこと。まあ、ここまでは分かる。考え方としては、経済的な事情により医療サービスを受けられない人をなくすという福祉的要素を多分に含んだ考え方です。
所得制限撤廃は財政への影響が大きい
ただ、昨今のトレンドである子ども医療費の所得制限撤廃というのは、福祉とは異なる考え方。芦屋市としても、そこには抵抗感を持っているとのこと。というのも、そこに舵を取ってしまうと、これからずっと毎年多額のコストが生じるからです。芦屋市がカバーしないといけないのが子育て支援だけというのなら別にそれでも良いですが、実際はそんなことはありません。高齢者支援を止めて、高齢者は姥捨て山に捨ててしまえっていう訳にもいきませんし、各種インフラも整備しないといけない。国から別段の予算が降りてくるのではなく、市の一般財源のなかでやりくりしないといけないとなると、行政サービスの持続性を考えた場合、おいそれとは踏み切ることはできません。
医療費の抑制は日本全体の課題でもある
後期高齢者については、所得の多寡にかかわらず、医療費1割負担でした。しかし、一定の所得がある方については、令和4年10月1日から2割負担をお願いしています。
後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)(厚生労働省)
子どもは、確かに大人よりも医療サービスを受ける機会が多くなりがち。しかし、高齢者はもっと多くなりがち。それでも自己負担を大きくする議論をしているのは、医療費の肥大化を抑えることによって、日本全国で肥大化する扶助費を抑制したいという思いがあるからです。極論かもしれないですが、僕は将来にわたって国民皆保険を堅持するためにも必要だと思います。
国民皆保険は、世界でも類を見ない日本のストロングポイントです。日本の治安維持にも大きく寄与している制度ですから、将来世代にもこのサービスを維持させたい。国にも、この辺は考慮に入れて検討してもらいたいと思います。
ギリギリ非課税世帯にならない世帯の税金で、富裕層の医療サービスを支払う矛盾
また、所得制限を取ることで、年収として何千万も受け取っている世帯のお子さんに対しても、全額公費負担となるのはどうなんだろうっていうのもあります。原資となる税金には、ギリギリの中で納税していただいているものも含まれているのは言うまでもありません。いわゆる裕福層で、自前で医療費を支払ってもあまり問題ない世帯に対しても公金を投入して無料で医療サービスを受けられるようにするというのはどう考えても抵抗があります。
あくまで無償化っていう考え方は、福祉的な視点に立って考えたほうが良いと思います。子育て支援による無償化を制度化すると、これまでやってきた色々な福祉制度にも大きな影響を与えてしまうと思います。
だから、この話で考えるとしたら、所得制限の撤廃ではなくて所得制限の引き上げかなというところ。
なり手不足の民生委員・児童委員の話
民生児童委員は、厚生労働大臣から委嘱を受けた人のことを指しており、市の制度ではなくて国の制度です。
芦屋市としては、原則各町に民生委員・児童委員が配置されているのですが現在、以下の町においては同委員が不在だとのこと。
- 業平町(4月に委嘱予定)
- 涼風町(4月に委嘱予定)
- 海洋町
- 南浜町
特に南芦屋浜は地域柄、若い人が多く、地域の繋がりが旧市街地と比べても弱いことがあり、なかなか後任が見つからないそうです。他の地域でも同じく後任が見つからない問題がありますが、南芦屋浜は更に顕著だとのこと。
同制度は100年以上経過している制度ですが、時間経過とともに、核家族化が進んでいます。お隣さんは顔は知ってるけど、何してる人かは知りません。なんてことはザラです。後任者探しについては、地域の繋がりで成り立ってたりする部分なので、現在における後任者探しはかなり過酷なものになっています。
また、かつてに比べても、主な守備範囲となる高齢者の数も相当増えており、民生委員にかかる負担も重くなっています。フルタイムの仕事を抱える現役世代ができる仕事ではありません。生計を立てるための仕事ではありませんから、制度的には可能。ですが会社の理解も必要となり、現実的にはとても難しいと思います。
国制度ですから芦屋市が積極的に制度改正に動くことはできず、芦屋市としては、可能な限り円滑に引継ぎできるようにサポートしますとしか言いようがないですが、制度そのものの見直しを考えないといけない時期が来ているのではないかと思います。多分、ボランティアに頼るシステムがもう難しい。
高齢者バス運賃助成の拡充について
高齢者バス運賃助成制度は、市内を運行する阪急バス路線について半額で乗車できるようになる70歳以上の人が受けられる制度です。
現状だと、対象のバス会社は阪急バスだけになりますが、新年度はみなと観光バスも対象に加わります。市内におけるみなと観光バスは、主に東西の路線になります。具体的に言うと山手幹線沿いの以下の場所にバス停留所があります。
- 翠ヶ丘
- 翠ヶ丘西
- JR芦屋駅北側
- 西芦屋町
- 三条南町
なお、阪急バスの場合は市内の移動に限定される格好になりますが、みなと観光バスの場合は阪急夙川~JR六甲道までは110円で行けちゃうよっていう仕組みになっています。
というのも、みなと観光バスの取組みとして他路線への乗り継ぎ費用が無料(六甲アイランドに向かう131系統への乗り継ぎはプラス100円)としているからです。
みなと観光バス(125系統 甲南山手~芦屋~夙川グリーンタウン)
芦屋の場合、三条町の方は市内の阪急バスの網から外れているため、阪急バスだけを対象とした制度だと、居住地によって、サービスを受けられる人と受けられない人に差があるのではないか?というのも言われてきていました。
三条町と言っても、駅に近い南の方の人は阪急バスに乗らなくても阪急電車などに乗れます。今回の拡充が課題の解決に直結しているのか?と言われると微妙なところですが、夙川~六甲道まで行けるというのは、高齢者のアクセシビリティはかなり改善することになるのかなと思います。
どこまで効果があるの?というのも眉唾ものでもある事業
ただ気になるのが、この事業の効果です。芦屋市としては「高齢者の外出促進のため」ということでやっています。確かに、外出に伴う費用負担が小さくなるのだから、外出には繋がると思う。
ただ、「きょうよう」と「きょういく」今日用事がある、今日行くところがある人はどっちにしても外出はするよねっていう話があります。問題は、行くところがなく、引きこもりがちの高齢者です。市内に引きこもりがちの高齢者がほとんどいないんですっていう状況なら、この取り組みは効果がある。でもそうじゃないのであれば、順番が違うのではないか?というところもあります。
事業の持続性を高める意味でも、その辺の効果測定はやるべきでしょ?というのを9月定例会の一般質問でやっています。
恐らく、アクセシビリティの向上があると利用回数も増えることになると思います。そうなってくると、事業費の規模も大きくなる。今は良いけど、いずれ、この事業は見直さないといけないね…っていう節目が来ると思います。そうなったら遅いんで、そうなる前に、確固たる効果測定をやってほしいんですよ。
外出促進と介護予防の因果関係を市が証明するのは難しいのは分かるから、とりあえず「外出促進に繋がっている」という明確な状況だけは把握しておいてほしいなというところ。
保育園の待機児童の話
待機児童は国基準だと5人だそうです。国基準は、ほんまどこにも行かれへんという状況のことを指します。申し込んで内定が出たけど、申請者側の事情で辞退するなど、結果的に入所待ちになっている児童という形だと288人。
待機児童の裏には育休継続の話もある
待機児童数としてみた場合、確かに大きい。ただ、0歳児の場合、育休継続希望の話があるんです。保育園は基本的に3月卒園です。なので、4月のタイミングが一番入れやすいタイミングになります。年度途中は、本当に突発的な空きが出るのを待つしかないので、難しい。
育休は基本的には1歳になるまでです。4月生まれの人以外は、基本年度途中に育休が切れることになります。そして、「保育園に入れられなかったから」という理由で育児休業給付金が支給されるのは1歳6か月までです(ただし、給与所得の50%)育休は2歳まで延長することは可能ですが、その場合、半年間は完全無収入となります。
こうしたことを踏まえると、子どもが生まれたタイミングによって0歳のときの4月に入れたほうが良い人と1歳になったあとのに4月に入れたほうが良い人とに分かれることが分かります。
入所タイミング | 4月生まれ | 5月生まれ | 6月生まれ | 7月生まれ | 8月生まれ | 9月生まれ | 10月生まれ |
2021年4月 | 1歳 | 11か月 | 10か月 | 9か月 | 8か月 | 7か月 | 6か月 |
2022年4月 | 2歳 | 1歳11か月 | 1歳10か月 | 1歳9か月 | 1歳8か月 | 1歳7か月 | 1歳6か月 |
生まれたタイミングによって、0歳のときの4月に入れてしまったほうが良いというタイミングの人と、1歳になった後の4月に入れたほうが良いという人とに分かれます。無論、育児休業給付金が月額給与の5割だと苦しい世帯の場合はこういう判断にはならないと思いますが、そうでない世帯の場合は満1歳のときは入所できなくても良いなって考える世帯があってもおかしくない。
厚労省通知を受け、芦屋市でも工夫している
ということもあり、育休延長希望という格好で満1歳時の入所申し込みをしている人が結構多い。だから、内定したけど辞退するという数もかなり多かったようです。そういうことを受けて、厚労省も地方自治体に「育休延長希望の人は予め分かるように工夫してよ」という通知を出しています。
育児休業・給付の適正な運用・支給及び公平な利用調整の実現等に向けた運用上の工夫等について(厚生労働省子ども家庭局保育課)
芦屋市の場合、フォーマット上はそういう記載はありませんが、入所の際の審査を希望しないというような申立書を別添することで、審査はせずに落選という格好にしますよという運用が行われています。
このあたりのテクニックは、なるべく早期に復帰してほしい雇用者的には困った話。だからこの数字を声高に知らしめる必要はないと思いますが、内部資料として持っておいてほしいというのがあります。施設の在り様を検討する上では、このあたりの数字の実数は把握しておく必要があると思います。少なくとも、直ちに288人分の施設が必要なんだ!っていう状況ではないはず。
まあでも結局、入所タイミングのニーズとしては0~2歳のニーズが圧倒的に高い。今の時点でここは手薄なので、ここを手厚くしてほしいなっていうのがありますね。
ですが、0~2歳の保育と3~5歳の保育は、必要な設備も異なるし、必要な先生の数も変わってくる。0~5歳の定員を持つ大規模保育所ってそう簡単には運営できないので、0~2歳の小規模保育事業所を増やすしかないだろうなと思っています。多分、まだ足らないから。
コメント
コメント一覧 (2)
所得制限は「撤廃」ではなく「引き上げ」が良いと私も思います。富裕世帯とそうではない世帯では子ども医療費の支払い能力が当然、異なります。応分の負担を前提に制度設計すべきと考えます。
無償にするとゼロ価格効果が生じ、結果的に医療費が増大するというデータもあります。所得制限を完全に撤廃するのはやはり問題がある。将来にわたり、国民皆保険は絶対に堅持してもらいたいと思っているので、医療費の肥大化は抑えつつ、子育て支援をしてもらいたいと思います。